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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
「普通の龍は、宝珠をつかんどるが、お父さんのは、菊の花をつかんでいますね。変っとる」
「お前も、彫れんか」
と、いってみた。
「彫れますかな? 本式の親分になる印に。……そしたら、僕も、やっぱり、龍を彫ります。そして、百合の花を肢に握らせますよ」
勝則の瞳は、夢遊病者のような、奇妙な光りかたをしていた。
奥の部屋から、誰か、出て来る足音がした。マンは、あわてて、手紙を財布に入れ、服の内ポケットに押しこんだ。
「おマンさんかえ?」
「はあ」
「金さんと勝則とが、網打ちから帰って来たんじゃなかったな?」
「帰って来て、二人とも、風呂に入っとります」
「腹が減っとりゃせんじゃろか?」
「さあ……? 帰りに、源さんの店に寄って来たようなこと、いうとりましたけど……」
「寝る前に、お茶漬でも食べるんなら、沢庵でも上げてやろうかと思うが……」
「ババンから、聞いてみて下さい」
「そうしようか」と、行きかけたが、ふと気づいたように、二三歩で引きかえして来て、「千博が、すこし熱があって、変な咳をしよるばい。勝則の小いときのごと、馬牌風(ジフテリア)にでもなると大事じゃけ、夜が明けたら、じき、医者に診て貰うがええな」