轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
マンに、懐中電燈を照らしかけた中年の巡査は、おどろいた顔つきで、
「こりゃあ、玉井の奥さん、どうなさったのですか」
マンは微笑を浮かべて、
「転びました。ここは危いですね。こんなに、水道工事の跡が穴だらけになっとるとに、街燈もないもんじゃけ……」
「怪我なさっとるようにあるが、……」
「大したことはありません。……それでは、これで」
「大丈夫ですか」
「大丈夫です」
マンは歩きだしたが、あまり大丈夫とはいえなかった。身体の方々が疼く。蹴られた横腹がずきずきし、捻挫したのか、跛を引かなければ歩けない。人通りのないさびしい夜道なのが幸だった。巡査は、気づかわしげに、しばらく見送っていたが、くるりと回転すると、反対の方角に、坂道を降って行った。その靴音の遠ざかるのを聞きながら、マンは、つぶれるほど、下唇を噛んで、
(お前らに、負けるもんか)
そんなえたいの知れぬ言葉を、はげしい憤りのなかで、絶叫していた。涙のにじんでいる眼が、ギラギラと、妖しく、光る。
日若座の方でも、椿事が持ちあがっていた。
「夕立」の次の幕は、狐忠信であったが、劇が佳境に入って来たとき、舞台の中央に大きく組み立てられてあった観音堂のセットが、巨大な音響とともに、くずれ落ちたのである。