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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

全市を空ッぽにするわけじゃなあ。吉田天皇の勅じゃけん、どげんかことでも出来るわけたい」

「そんなことまで、するじゃろか?」

「こっちの考えで、相手を律すると、大きな大事になる。ああいう敵を向こうに廻すときにやあ、こっちも、えげつないほど根性を悪う持たんと、調子が合わん。こっちからも、スパイが入れてあるけん、大概のことはわかる。玉井さん、気をつけんといかんばい。敵は、ああたと井上君との地盤を調べて、票を片っぱしから食うてしまう目論見じゃ」

「なに、こっちは、なんば、敵が来ても、ゆるがん票があるけ」

「中立聯盟の候補は、どれも、弱かけんなあ」

「わたしの票を、適当に分けるよ。わたしや井上君だけが当選しても、なんにもならん。一人でも、同志が余計出にゃいかん。原田君、あんたにも、三十票ほど考えちょる」

「おおきに。それだけ貰や、鬼に金棒たい。そろそろ、言論戦の火蓋ば切ろうと思うちょる。吉田一派、民政党横暴の罪史を、徹底的に、市民のまえに、暴露してやるつもりじゃ。市営バス買い入れ問題、公立病院不正事件、若戸渡船建造入札問題、若松・島郷・合併問題、税金取り立ての不公平、水道料値下、それに、今度の日若座放火事件――材料は、なんぼでもある。