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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

「だしぬけじゃないですばい。わたしが選挙事務長を引きうけたのも、あなたを当選させたいばっかり、ない智慧と力とをふりしぼって、これまでやって来ました。じゃけど、もう、やれん」

「どうして?」

「わたしが、なんぼいうても、あなたは聞かんで、票をあっちこっちに分けなさる。そら、同志を落しちゃならんという、あなたの気持はようわかっとるですよ。その気持をうれしいとは思いますたい。でも、そげなことしよったら、あなたが危い。票というもんな、大体があやふやなもんじゃのに、今度の敵の食いこみははげしいですばい。馬鹿にならん。わたしゃ、それを、一票でも逃がすまいと思うて、必死に食いとめよるとです。それなのに、肝腎のあなたが、どんどん、票を分けてしまうんじゃあ、わたしゃ、なんのための選挙事務長かわかりゃせん。あなたは楽観しとんなさるごとあるが、わたしは、こんなことじゃあ、落選と見ました。票を分けることを止めなさらにゃあ、わたしは罷免して貰います」

「選挙事務長に怒られたんじゃあ、わたしも困る。そんなら、票の分配はこれくらいでやめましょう」

金五郎は苦笑して、仕方なしに答えた。