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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
「ヒヤヒヤ」
「仙人のいうとおり」
掛け声、拍手、笑声が走るかと思うと、
「バイキンはお前じゃあ」
と、弥次る者もある。
控室では、十四五人、雑談をしながら、弁士は出番を待っている。
すでに、表は真暗になっていた。窓の外に、夜風にゆらいでいるアカシアの葉が、電燈の光に照らしだされ、幻燈のようなあざやかに濃い緑を、浮きあがらせている。星が美しい。
(この樹の下で、この間、二十人もの抜刀隊に脅迫されたんじゃが、……)
金五郎はそれを思いだして、口中のざらつく思いを味わっていた。同時に、そのときの隊長、唐獅子の彫青を入れた、鳥打帽の男が、お京とつれだって、演説会場にあらわれている、ということを考えて、異様な昏迷をおぼえずには居られない。その男が般若の五郎の子供にちがいないことは、疑う余地がないと思われた。
(二人は、今夜も、きっと、聴衆のなかに、紛れこんどるに違わん)
それを考えて、妙な胸騒ぎを感じていると、
「玉井君、どうかしたかね? なんだかそわそわしてるようだが、……」
と、井上安五郎にいわれた。
大石鶴松が、入って来た。
「玉井さん、南階段の柱のところに、立っとりますよ」