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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
しきりに、水を飲んだ。
「……今までお話し申しあげましたように、万事、民政党のやり口というものは、狡い。「人の法事で牛蒡をする」という諺がありますが、……」
どッと、堂内をゆるがす笑声が起った。
金五郎はびっくりして、いいなおした。
「いや、まちがいました。――人の法事で牛蒡を……」
また、爆笑。
金五郎は立ち往生して、水を飲んだ。苦笑が止まらない。
(矢崎新兵衛の「枕をならべて、出馬」を笑えんじゃないか)
そう思いながら、今度はゆっくりと、
「人の、牛蒡で、法事をする――自分は手をよごさず、うまい汁を吸うのは、民政党の十八番であります」
「お前の十八番は、法事で牛蒡をすることじゃろ」
誰かが弥次って、また、ひとしきり、場内がどよめいた。
金五郎は、なおも、汗をふきふき、演説をつづけたが、ときどき、南階段の方へ投げる眸に、マンが、お京の方へ寄って行くのが見えた。マンが呼びかけたらしく、お京がふりむいて、なにか、答えている。無論、遠い演壇からでは、なにを話しているかはわからない。
やがて、二人はつれだって、出て行った。
その後から、鳥打帽の巨漢が、追うように、姿を消した。