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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

「この間は、十郎さんが、二十人もの遊人を雇って、玉井さんを脅迫しましたのよ。御存じ?」

「ああ、公会堂の裏ででしょう?」

「ええ」

「みんな、日本刀を抜いて……」

「ええ」

「そのことは、うちの人から聞きましたわ。まあ、そうですか。吉田一派の者とばっかり、思うとったのに。でも、おかしいわねえ。うちの人を脅迫したり、用心棒になって守ったり、……」

「みんな、母のいいつけです」

「お京さんの?……」

「母は、東京にいますけれども、母の心は、若松に来て居ります。あたしは、その母の身代りですの」

「もっと、詳しく話して下さい」

マンは切迫した顔になって、膝を進めた。

大榎の梢で、梟が鳴いている。遠く、武徳殿の建物に半かくれて、公会堂が見える。聴衆で埋められている二階の演説会場からときどき、拍手や、笑声、喧号のどよめきが伝わって来る。

その方に、視線を投げて、お葉は、ひとりごとのように、語りだした。

「母は、自慢の出来る女ではありません。若いころから、女だてらに、バクチ打ちの仲間に加わって、旅から旅を彷徨っていました。北は北海道から、南は九州の果てまで。それこそ、全国を股にかけていたわけです。