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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
なんだか初めてらしくて、賽の目も、張りかたも、よく知らなかったそうですが、半方の定張りで、一度もくずれず、勝ちっぱなし、玄人連の度胆を抜いたといいます。それが母の印象に残ったようです。玉井さんの方も、田舎に珍しい、伝法な、……そういっては、なんですが、……ふりかえってもみたいほどの母の美しさに、ちょっと、気を惹かれていたらしいとのことです。……でも、そのとき一度きりで別れてしまえば、なんでもなかったわけでしょう。母とて、そのときは、格別、玉井さんに惚れたというほどでもなかったらしいですから」
「その次逢うたのは、いつか知らん?」
「三年経ってから、明治三十八年四月です」
「ちょっと待って下さい」今度は、マンが、若いころの苦労の名残りをとどめている、節くれだった指を折ってから、「それは、うちの人が、聯合組の遠足で、二日市の武蔵温泉に行った月じゃが、……」
「そうです。その武蔵温泉で、母が、玉井さんに、二度目に逢ったのです」
「また、バクチ場で?」
「ええ。母の一行が、田舎のカモを狙って、泊っていた筑紫館に、聯合組の人たちも同宿しました。そこで、母と玉井さんは三年ぶりで邂逅したわけですが、その夜、鉄火場で、或る事件が起りました。