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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

毎日、やけ酒ばっかり飲んで、狂人のごとなっとった。あのときに、ピストルがあったら、おりゃあ、また、追いつめられて、「蝮一」を殺したときのように、友田喜造か、栗田銀五かを、やっとったかも知れんなあ。じゃが、時やんがピストルを持って来て、くれたときにゃあ、なんぼか頭が冷えとった」

「そうか」

「おれも、昔とはちがう。あの百合香なあ、あいつ、三年ほど前に、亭主に先だたれて、後家暮しをしとったが、今度、願ってもないええところから、貰い手がついた。再縁にしちゃあ、拝みたいほどの人よ。その縁談の、……いや祝言のため、東京から帰って来たんじゃ。あいつも大よろこびよ。それから、今、京都の大学に行っとる長男、鹿児島の七高に居る二男坊――考えて来りゃサ、少々、腹が立つことがあったところで、うかつなことは出来ん。まして、人殺しなんど、……」

「わかった。よう、我慢してくれた。暴力は絶対いかん。もっと、別の方法で、仇を討つことが出来るよ」

「そうじゃ。おれも、それを悟ったんじゃ。それに、日若座も、お前たちのおかげで、再建のめどもついた。保険もつけてあったもんで、助かった。島崎勇次がひと肌ぬいでくれて、……いや、両肌ぬぎで応援してくれて、前よりも、三倍も五倍も立派な劇場が出来そうにある。