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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

そんなこと、あたしがいわなくたって、百も二百も承知しとる癖に、河豚なんて食うて。河豚はいつも食うて、当らんことを知っとる筈なのに、どんな河豚を、どうして食べたの? 今ごろの河豚、食うもんがありますか。それとも、敵方から、計略で食わされたとですか? この大切な問題の最中に、一番責任のあるあなたが、こんな考えのない、……仲仕の代表、玉井金五郎が河豚中毒で死んだ。……そういわれてもええの? 笑いもんになっても、ええの? おお、恐し」

逆上したように、しゃべりつづけていたマンは、眼を真赤にし、ワア、ワアと、大声を立てて泣きだした。

洞海湾の水の色が、梅雨に濡れた後、やがて、夏雲を映すようになった。

戸畑側の新川岸壁には、三菱炭積機が、着々と、工事を進められた。

港には、なにごともないように、日夜、船舶が出入した。

聯合組の隣りに、「若松港汽船積小頭組合」の事務所がある。その看板とならんで、三倍も大きな、「争議本部」の新しい板札がかかげられた、小頭組合の裏にある「玉井組詰所」の二階に、「若松港沖仲仕労働組合」の看板がかかっている。赤地に、スコップ、雁爪、櫂、を組みあわせて図案化した組合旗が、ひるがえっている。