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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
馬鹿にしたようないいかただった。
「友田の大将に、ちょっと……」
「まだ寝んで居んなさるですよ」
「起して下さい――玉井金五郎が、折り入って話したいことがあって、おうかがいした。……ちゅうて、……」
「そんなら、こっちで、……」
金五郎は、応接間に通された。
友田が在宅であることは、あらかじめ、確かめてある。友田の方も、いるときには、居留守を使ったり、玄関払いを食わせたりすることはなかった。昔の金五郎とはちがうのである。
豪奢をきわめた部屋である。龍を刺繍した絨毯のうえに、さらに、虎の皮が敷いてある。調度や、壁かけなども、高価なものばかり、しかし、それらはただ雑然と飾られてあるだけで、配列とか、調和とかに、すこしも考慮の払われていない趣味の悪さが、露出していた。応接間の横は、事務所になっているらしい。待っている間に、そこへ、急速に、人数の集まる気配を、金五郎は、感じた。
二十分ほどが、経った。
廊下に、スリッパの足音が聞えた。
扉が、開いた。
「やあ、お早よう」
黒襟をかけた丹前姿の友田喜造があらわれた。鳶のような眼を細めて、にこにこしている。友田は扉をしめて、鷹揚に、安楽椅子に腰を下した。