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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
おき下さい。……失礼しました」
金五郎は、ピストルを腹巻に入れると、扉を排して、外に出た。
廊下の外や、事務室には、大勢の子分たちが、緊張した様子で、群がっていた。しかし、応接間内の出来事については、なにも知らないらしく見うけられた。ドアに耳をくっつけたり、鍵穴からのぞいたりして、中の様子をうかがうようなことは、誰もしなかったのであろう。もし、そうしていたら、どんなに、金五郎が声を低めて、隠密行動をとったにしたところで、暴露していたにちがいない。
(危いところじゃった)
と、思った。そのときになって、慄然とした。
誰一人、金五郎が友田喜造をピストルで殺しに来た、などとは、気づきもしないのだ。日ごろから、金五郎の喧嘩ぎらい、柔和で、温厚な気質はよく知られている。いわば、暴力団からは舐められている。それが幸した。ただ、争議のことで、連絡か哀願かに来たものと定めて、深くは、金五郎の言動に注意しなかったのである。
出て来た金五郎を、人相のよくない連中が、凄味をきかせて、睨んでいた。けれども、応接間にいる親分から、なんの指令も出ないので、手出しはしなかった。