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まと
魔都
久生 十蘭
「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页
ところが「噴水の会」が始まって、この辺が群集で一杯になり、仕事が続けられぬようになったので、それで例の騒ぎをおっぱじめたのだということは自然と理解されるのである。
これでいよいよ王様が噴水の下にいるということが確定になった。しかし、この分ではどうもこの辺に入口があるのではないらしい。何か途方もないところにあるように思われ出して来た。
加十は穴の中に坐って、泰然と腕を組んで考える。何かいい思い付きが浮かばぬまではここを動かぬつもりと見える。このへんはさすがに田舎者の土性骨の太さを示していて、なかなかどうして大したものなのである。
そんなふうにして二十分も坐っていたが、又しても、急に膝を打って、
「判った!……こうして見ると、俺の頭もまんざら捨てたもんじゃない。……ああ、なぜこんな簡単なことが今までわからなかったのだろう。……江戸時代の神田上水の大伏樋が、まるで迷路のようにこの辺の地下を走っているということは、かねて学校で教わったことがあった。……つまり、皇帝は、どこかからその大伏樋を伝って噴水の下まで行かれたものと思われる。……伏樋の古地図さえあればすぐ判るのだが、それにしても一体今ごろどこに伏樋の口などが明いているのだろう……」