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あるはいまつのどくはく

ある偃松の独白

中村 清太郎

春雪写山行「旅」1940(昭和15)年4月<br>黒部川峡谷の話「山岳 第十二年第一号」1918(大正7)年2月<br>枯木の美と怪「国立公園」1952(昭和27)年3月<br>雪山と廃道「山 二巻二号」1935(昭和10)年2月<br>七面山冬ごもりの記「山小屋」1947(昭和22)年<br>黒部川初遡行の追憶「山と渓谷」1939(昭和14)年7月<br>大雪山あれこれ「国立公園」1955(昭和30)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 132,905 字 · 262 页

青空文庫

北アルプスの秘境 ――清見ヶ原と穂影ノ池――

に訴えたいと思う。

○

この山の植物は営林署の監視で相当喰いとめているものの、やはりずいぶん荒らされているようだ。私の実見だけでも目にあまるほどで、某高校の一団など大がかりな根こぎまでやり、監視員の説得で(私も立ち会ったが)先生共々陳謝の上、獲物を山に返した例もあった。道ばたの花摘みなどは数え切れまい。

蝶の濫獲も行われているようだ。他の部門の許可などでカムフラージュして、敵は本能寺にあり、ウスバキチョウなどの稀品を何十何百と捕え去った形跡もあったし、幼虫飼育のため食草ぐるみの濫採も耳にした。こんな立派な環境において、どうしてこうもつつしみを忘れ、無考えな事を平気でやるものか、実に嘆かわしい次第である。

ともあれ大雪山こそは、最後に残された、わが国山岳の原始境であることを思えば、せめてこれだけは自然のまま大切に保存して、後世のために遺したいと念願するのは、おそらくすべての愛山家が一致するところではあるまいか。(昭和三十年「国立公園」)

北アルプスの秘境

――清見ヶ原と穂影ノ池――

登山路が縦横にひらけ、何万という人が往来する、北アルプスのまん中に、今までこんな天地が隠れていようとは……。