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わかむらさき

わか紫

泉 鏡花

「新小説 第十年第一卷」1905(明治38)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,708 字 · 75 页

青空文庫

梅柳

二十五

何も見まい、聞くまいと思うに、この壁を透して、賊どもが、魚見の巌にかたまりおるのが、月夜の遠距離のように歴然と見える。)

といった、眼の光爛々として、

(蔦、こう神経が過敏になっちゃ、疾は重いな。)

夫人は再び二階の廊下、思わず映る姿見に、消えも入らんず思う時、座敷の燈が滅したのであった。

梅柳

二十五

「お鶴さん、分りましたか、旦那のこのお手紙が私の手にある内だったから可いけれど、もう一足で、番頭に渡るとね、今頃は、皆が捕まっているかも知れません、もしか、その人が牢へ行ったらどうするの。

お前はきっとそうしたら一所に行くとおいいだろうが、おかみじゃ、牢の中で、同棲に置いては下さいません。第一お前、今ここで、私がお前を帰さなかったら、どうしてその人に逢えますね。」

思い切って声強く、差寄る膝に手をかけた。お鶴は思わず取縋って、忍び音にわっと泣いた。

背に夫人も頬をあて、堪えず、はらはらと落涙して、

「おお、可哀相に、そんなかい。お前だって、私だって、良人を思うに二つはない。誰が、誰が、お前を帰さないでおくものか、警察へやるものか。

お前、夜中に崖に立って、その人を待った時、寒かろうって、あの、外套の下へ入れて抱いてくれたの。