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やまのじんせい
山の人生
柳田 国男
山の人生「アサヒグラフ 第四巻第二号~第五巻第七号」朝日新聞社、1925(大正14)年1月7日~8月12日<br>山人考「大正六年日本歴史地理学会大会講演手稿」1917(大正6)年11月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,022 字 · 226 页
二一 山姥を妖怪なりとも考えがたきこと
二一 山姥を妖怪なりとも考えがたきこと
山姥・山姫は里に住む人々が、もと若干の尊敬をもって付与したる美称であって、或いはそう呼ばれてもよい不思議なる女性が、かつて諸処の深山にいたことだけは、ほぼ疑いを容れざる日本の現実であった。ただしこれに関する近世の記録と口承とは、甚だしく不精確であった故に最も細心の注意をもって、その誤解誇張を弁別する必要があるのはもちろんである。自分が前に列記したいくつかの見聞談のごとく、女が中年から親の家を去って、彼らの仲間に加わったという例のほかに、別に最初から山で生まれたかと思われる山女も往々にして人の目に触れた。これも熊野の山中において、白い姿をした女が野猪の群を追いかけて、出てくることがあると、『秉穂録』という本に見えている。土佐では槙山郷の字筒越で、与茂次郎という猟師夜明に一頭の大鹿の通るのを打留めたが、たちまちそのあとから背丈一丈にも余るかと思う老女の、髪赤く両眼鏡のごとくなる者が、その鹿を追うてきたのを見て動顛したと、寺石氏の『土佐風俗と伝説』には誌してある。
猪を追う女の白い姿というは、或いは裸形のことを意味するのではなかったか。