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やまのじんせい
山の人生
柳田 国男
山の人生「アサヒグラフ 第四巻第二号~第五巻第七号」朝日新聞社、1925(大正14)年1月7日~8月12日<br>山人考「大正六年日本歴史地理学会大会講演手稿」1917(大正6)年11月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,022 字 · 226 页
一七 鬼の子の里にも産まれしこと
そうしていかにも人間らしい強い執着をもって、愛せられかつ守られていたというのである。それを単なる昔話の列に押並べて、空想豊かなる好事家が、勝手な尾鰭を附添えたかのごとく解することは、少なくとも私が集めてみたいくつかの旁証が、断じてこれを許さないのである。
一七 鬼の子の里にも産まれしこと
母は往々にして不当に疑われた。似ておらぬからわが子でないという単純に失した推断は必ずしも独り五葉山中の山人のみの専売でもなかったのである。至って平和なる里中にも親に似ぬ子は鬼子という俚諺は、今もって行われていて、時々はまたこれを裏書するような事件が、発生したとさえ伝えられるのである。
「日本はおろかなる風俗ありて、歯の生えたる子を生みて、鬼の子と謂ひて殺しぬ」と、『徒然慰草』の巻三には記してある。江戸時代初め頃の人の著述である。なおそれよりも遙かに古く、『東山往来』という書物の消息文の中にも、家の女中が歯の生えた児を生んだ。これ鬼なり山野に埋むるにしかずと近隣の者が勧めるが、いかがしたものだろうかという相談に答えて、坊主にするのが一番よろしかろうといっている。すなわち以前は相応に頻々と、処々にこのような異様の出来事があったかと思われるのである。