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やまのじんせい
山の人生
柳田 国男
山の人生「アサヒグラフ 第四巻第二号~第五巻第七号」朝日新聞社、1925(大正14)年1月7日~8月12日<br>山人考「大正六年日本歴史地理学会大会講演手稿」1917(大正6)年11月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,022 字 · 226 页
二二 山女多くは人を懐かしがること
導者曰ふ。これ怪物があま皮を食ひたる也。怪物は又篠竹を好みて食ふといへり。糞の中には一寸ばかりに噛み砕ける篠竹あり。獣の毛もまじりたりしとかや、按ずるに是は狒々と称するものにて、山丈とは異なるなるべし」(以上)。この話はいかにも聴いた通りの精確な筆記のようだが、やはりよく見ると、文人の想像が少しはまじっていること、あたかも噛み砕いた篠竹のごとくである。例えば長き唇反り返るとあるのは、支那の書物に古くからあることで、じつはどんな風に長いのか、日本人には考えもつかぬ。とうてい夜の引明けなどに眼につくような特徴ではなかったのである。山丈のジョウは高砂の尉と姥などのジョウで、今の俗語のダンナなどに当るだろう。すなわち山人の男子のやや年輩の者を、幾分尊んで用いた称呼にして、正しく山姥と対立すべき中世語であった。
二二 山女多くは人を懐かしがること
全体に深山の女たちは、妙に人に近づこうとする傾向があるように見える。或いは婦人に普通なる心弱さ、ないしは好奇心からではないかと、思うくらいに馴々しかったこともあるが、それにしては彼らの姿形の、大きくまた気疎かったのが笑止である。