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やまのじんせい
山の人生
柳田 国男
山の人生「アサヒグラフ 第四巻第二号~第五巻第七号」朝日新聞社、1925(大正14)年1月7日~8月12日<br>山人考「大正六年日本歴史地理学会大会講演手稿」1917(大正6)年11月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,022 字 · 226 页
ただし猪罠の構造を詳しく知らねばならぬが、かかった女が身の上を語ったという小菅岳の一条には、甚だしく信じにくいものがある。姉と妹とが別れ別れに住んでいて、時あって相訪うということは話の様式の一つであり、乱を避けて山に入ったというのも、この地方の人望ある昔談りにほかならぬ。言葉が古風で聴取りにくかったという説明とともに、必ず仲継者の潤飾が加わっているかと思う。それよりも大切な点はわずかな歳月、わずかな距離を隔てて似たような三つの事件が起りしかもそれぞれ状況を異にして、真似た痕跡のないことである。自分は必ず今にまた新しい報告の、更に附加せらるべきことを予期している。
他の地方の類例はまた熊野の方に一つある。長八尺ばかりな女の屍骸を、山中において見た者がある。髪は長くして足に至り、口は耳のあたりまで裂け、目も普通よりは大なりと記している。それから『越後野志』巻十八には、山男の屍骸の例が一つある。天明の頃、この国頸城郡姫川の流れに、山男が山奥から流れてきた。裸形にして腰に藤蔓を纏う。身のたけ二丈余とある。ただし人恐れてあえて近づかず。ついに海上に漂い去るといって、寸尺は測って見たのではなかった。