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やまのじんせい

山の人生

柳田 国男

山の人生「アサヒグラフ 第四巻第二号~第五巻第七号」朝日新聞社、1925(大正14)年1月7日~8月12日<br>山人考「大正六年日本歴史地理学会大会講演手稿」1917(大正6)年11月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,022 字 · 226 页

青空文庫

少し気味が悪くなってもう還ろうと思い、その小屋を出てうしろの小路をわずかくると、だしぬけに背の高い女が三人横の方から出て、その一人が自分の手を強く捉えた。三人ながらほとんと裸体であった。何か頻りに物を言うけれども怖ろしいので何を言うか解らなかった。その内に大声に人を喚んだ声を聞いて、小屋から多勢の者がどやどやと出てきたので、女は手を離して足早に嶺の方へ上ってしまった。これも小山勝清君の話で、経験をした原田氏は、そのころまだ若かった同君の叔父である。

自分はこの鉱山のあった仁原山が、前に挙げた獣のわなに山女の死んでいた三つの場処の、ほぼまん中である故に、ことにこの話に注意をする。もし山人にも土地によって、気風に相異があるものとすれば、南九州の山中に住む者などは、とりわけ人情が惇樸でかつ無智であったように思われるからである。

この類の実例はゆくゆくなお追加しうる見込みがある。前にいう仁原山は市房山と白髪岳との中間にある山だが、その白髪岳の山小屋でも近年山の事業のためにしばらく入っていた某氏が、夜になると山女がきて足を持って引張るので、なにぶんにも怖ろしくて我慢ができぬといって還ってきたこともあった。