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やまのじんせい

山の人生

柳田 国男

山の人生「アサヒグラフ 第四巻第二号~第五巻第七号」朝日新聞社、1925(大正14)年1月7日~8月12日<br>山人考「大正六年日本歴史地理学会大会講演手稿」1917(大正6)年11月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,022 字 · 226 页

青空文庫

もちろんこれに由って彼らをアイヌの血筋と見ることは早計である。彼らの平地人との交通には、言語風習その他になんの障碍もなかったのみならず、少なくとも近世においては、彼らも村にいる限りは附近の地を耕し、一方にはまた農民も山家に住む者は、傍ら狩猟に因って生計を補うた故に、名称以外には明白に二者を差別すべきものはないのである。

ただ関東以西には猟を主業とする者が、一部落をなすほどに多く集まっておらぬに反して奥羽の果に行くとマタギの村という者がおりおりある。熊野・高野を始めとして霊山開基の口碑には猟師が案内をしたといい、または地を献上したという例少なからず、それを目して異人仙人と称していて、通例の農夫はかつてこの物語に参与しておらぬのを見ると、彼ら山民の土着が一期だけ早かったか、または土着の条件が後世普通の耕作者とは、別であったかということだけは察せられる。

しかも猟に関する彼らの儀式、また信仰には特殊なるものが多い。万次万三郎の兄弟が、山の神を助けて神敵を退治し、褒美に狩猟の作法を授けられたなどという古伝もその一例である。東北ではシナの木のことをマダといい、山民は多くその樹皮を利用する。