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やまのじんせい

山の人生

柳田 国男

山の人生「アサヒグラフ 第四巻第二号~第五巻第七号」朝日新聞社、1925(大正14)年1月7日~8月12日<br>山人考「大正六年日本歴史地理学会大会講演手稿」1917(大正6)年11月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,022 字 · 226 页

青空文庫

つまりは俵藤太の取れども尽きぬ宝などと、系統を同じくした歴史的空想である。

筑前甘木の町の乙子市、すなわち十二月最終の市日にも、山姥が出るという話が古くからあった。正徳四年に成る『山姥帷子記』という文に、天正のころ下見村の富人大納言なる者の下僕木棉綿を袋に入れてこの日の市に売りに出で、途中に仮睡して市の間に合わなかった。眼が覚めてみると袋の綿はすでになく、そのかわりに一枚の帷子が入っていた。地麁くして青黄黒白の段染であった。これも山姥の物と認められて、宝物として二百年を伝えたという話を書留めている。

それからこのついででないともう他にいう折はないが、絵かきたちだけの今でも遊んでいる空想境に、天狗の酒買い狸の酒買いなどという出来事がある。白鳥の徳利や樽に通い帳を添えて、下げて飛んでいる場面は後世風だが、由ってくるところは甚だ久しいようである。自分は別に今日の酒樽の原型として、瓢の盛んに用いられた時代を推測し、許由以来の支那の隠君子等が駒を出したり自分を吸込ませたり終始この単純なる器具を伴侶としているには、何か民俗上の理由があるらしいことを、考えて見ようとしているのであるが、それは広大なる未解の課題だとしても、少なくとも山の人の生活に、この類の僅かな用具が非常なる便益であり、従って身を離さずに大切にしている