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やまのじんせい

山の人生

柳田 国男

山の人生「アサヒグラフ 第四巻第二号~第五巻第七号」朝日新聞社、1925(大正14)年1月7日~8月12日<br>山人考「大正六年日本歴史地理学会大会講演手稿」1917(大正6)年11月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,022 字 · 226 页

青空文庫

三〇 これは日本文化史の未解決の問題なること

しかし考えて行くほどかえってだんだんにむつかしくなるらしいから、もうこの辺で一旦は話をやめておこう。

三〇 これは日本文化史の未解決の問題なること

ここで打切ってはもちろんこの研究は不完全なものである。最初自分の企てていたことは、山近くに住む人々の宗教生活には、意外な現実の影響が強かったということを、論証してみるにあったのだが、残念ながらそれにはまだ資料が十分でない。後代の篤学者はなお多くの隠れたるものを発掘することであろう。しかしただ一つほぼ断定してもよいと思うことは、中世以後の天狗思想の進化に著しく山人に関する経験が働いていたことである。単に眼が光る色が赤い、背が高いなどの外形のみではない。仏法方面の人からは天魔の扱いを受けつつも、感情があり好意悪意があって、或いは我々に近づき或いはまた擯斥し、機嫌にも時々のむらがあって、気に向けば義侠的に世話をしてくれるなど、至って平凡なる人間味の若干をまじえていることは、それが純然たる空想の所産でないことを思わしめる。

彼らはまた時として我々から、ひどくやっつけられたという話もある。天狗の神通をもってして、不覚千万のようではあるが、かの杉の皮で鼻を弾かれて、人間という者は心にもないことをするから怖ろしいといった昔話などは、少なくともかつて人間と彼らとの間に、対等の