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やまのじんせい

山の人生

柳田 国男

山の人生「アサヒグラフ 第四巻第二号~第五巻第七号」朝日新聞社、1925(大正14)年1月7日~8月12日<br>山人考「大正六年日本歴史地理学会大会講演手稿」1917(大正6)年11月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,022 字 · 226 页

青空文庫

これを要するに山人の絶滅とは、主としては在来の生活の特色のなくなることでありました。そうして山人の特色とは何であったかというと、一つには肌膚の色の赤いこと、二つには丈高く、ことに手足の長いことなどが、昔話の中に今も伝説せられます。諸国に数多き大人の足跡の話は、話となって極端まで誇張せられ、加賀ではあの国を三足であるいたという大足跡もありますが、もとは長髄彦もしくは上州の八掬脛ぐらいの、やや我々より大きいという話ではなかったかと思われます。北ヨーロッパでは昔話の小人というのが、先住異民族の記憶の断片と解せられていますが、日本はちょうどその反対で、現に東部の弘い地域にわたり、今もって山人のことを大人と呼んでいる例があるのです。

私は他日この問題がいますこし綿密に学界から注意せられて、単に人類学上の新資料を供与するに止らず、日本人の文明史において、まだいかにしても説明しえない多くの事蹟がこの方面から次第に分ってくることを切望いたします。ことに我々の血の中に、若干の荒い山人の血を混じているかも知れぬということは、我々にとってはじつに無限の興味であります。