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やまのじんせい
山の人生
柳田 国男
山の人生「アサヒグラフ 第四巻第二号~第五巻第七号」朝日新聞社、1925(大正14)年1月7日~8月12日<br>山人考「大正六年日本歴史地理学会大会講演手稿」1917(大正6)年11月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,022 字 · 226 页
徳田君の令兄が頼まれて上って見ると、その青年が横たわっているので、背負うて降してやったそうである。木の葉を噛んでいたと見えて、口の端を真青にしていた。半分正気づいてから仔細を問うに、大きな親爺に連れられて、諸処方々をあるいて御馳走を食べてきた、また行かねばならぬといって、駆けだそうとしたそうである。尤も常から少し遅鈍な質の青年であった。その後どうなったかは知らぬという(徳田秋声君談)。
紀州西牟婁郡上三栖の米作という人は、神に隠されて二昼夜してから還ってきたが、その間に神に連れられ空中を飛行し、諸処の山谷を経廻っていたと語った。食物はどうしたかと問うと、握り飯や餅菓子などたべた。まだ袂に残っているというので、出させて見るにみな柴の葉であった。今から九十年ほど前の事である。また同じ郡岩田の万蔵という者も、三日目に宮の山の笹原の中で寝ているのを発見したが、甚だしく酒臭かった。神に連れられて摂津の西ノ宮に行き、盆の十三日の晩、多勢の集まって酒を飲む席にまじって飲んだといった。これは六十何年前のことで、ともに宇井可道翁の『璞屋随筆』の中に載せられてあるという(雑賀貞次郎君報)。