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やまのじんせい
山の人生
柳田 国男
山の人生「アサヒグラフ 第四巻第二号~第五巻第七号」朝日新聞社、1925(大正14)年1月7日~8月12日<br>山人考「大正六年日本歴史地理学会大会講演手稿」1917(大正6)年11月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,022 字 · 226 页
或いは智弁学問ある法師の増上慢が、しばしば生きながら天狗道に身を落さしめたという話もある。平田先生などは特にこの点ばかり、仏者の言を承認しようとしているが、これさえ近世の天狗はもう忘れたもののごとく、むしろしばしば人間の慢心を懲らし戒めたという実例さえあって、自慢を天狗という昔からの諺も、もはや根拠のないものになろうとしている。それというのが時代により地方によって、名は同じでも物が知らぬまに変っていたからである。書物はこういう場合にはたいていはむしろ混乱の種であった。学者ばかりがひとりで土地の人々の知らぬことを、考えていた例は多かった。なるほど天狗という名だけは最初仏者などから教わったろうが奇怪はずっと以前から引続いてあったわけで、学者に言わせるとそんなはずはないという不思議が、どしどしと現れる。日本で物を買うような理窟には行かなかったのである。天狗をグヒンというに至った原因もまだ不明だが、地方によってはこれを山の神といい、または大人・山人ともいって、山男と同一視するところもある。そうして必ずしも兜巾篠懸の山伏姿でなく特に護法と称して名ある山寺などに従属するものでも、その仏教に対する信心は寺侍・寺百姓以上ではなかった。