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にっき

日記

宮本 百合子

11 一九二五年(大正十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,462 字 · 72 页

青空文庫

三月二十八日

三月二十九日

三月三十日

そのとき、私の云ったこと。

Sに対する傾倒はHに対する反動ではないか。Sは十六歳、夢中な Passion、情慾にたわわだ。Hは現実的で思慮して居ながら自分の感情に負けて居るはがゆさがあるから。故にSだけとしたら案外なのではないか等。

〔欄外に〕今日御祖母上の百ヵ日。

三月二十八日(土曜)

春陽会明日迄、見ないのは惜しい故、午後、Yと会い、見る。皆相当粒ぞろいではあるがつきぬけるようなもの一つもない。小さく、器用にまとまって居る。芸術の容易でなさ! 絵に限らない。

野上さんの小説「参」短篇三つで女性の生活――性的影響のもとにある心――を描こうとしたものだが、愛がこもって居ないので全然失敗だ。「助教授Bの幸福」にあったようなものが見えないでもない。わるい。三を参とこって読むのも臭い。

三月二十九日(日曜)雨

雨が降ったので予定の散歩も出来ず、Y、ごろごろ。のらのらして居るのが自分は苦しかった、悲しい心持でふざける。夜、「堺利彦伝」をよむ、面白し。彼が自分の性的生活について恥しがり黙りたがって居るところなど好意がもてる。

三月三十日(月曜)

Y、落付かず。一種の神経的惨虐性風なものを示す。