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にっき

日記

宮本 百合子

11 一九二五年(大正十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,462 字 · 72 页

青空文庫

十月十四日

十月十五日

三人子供をつれた夫婦、細君気に張がなくてべたべた。女の子、こわれた安人形のよう、浜名湖を通るとき両親は眠って居るし、恐怖に襲れ、突立って四方の水を眺め乍ら、堪らなそうに「あぶないよう、あぶないようっ」と泣き出した。父ねむい眼で、娘を抱き、胸の下に入れた。娘それですっかり安心し、だかれてすやすやと眠って居る。愛らしき光景。

貞雄さん迎に来て居てくれた。

十月十四日(水曜)晴

実によい天気、よい天気!

コスモスの花美しく見えた。Yと二人で、ブランコなどをして楽しむ。からりとしてよい天気、家もよし、愉快。貞雄の母という人も、しごく女らしい女という質で、私のような局外者には悪意がもてなかった。午後山科へ、Yの母の妹に当る人をたずねてゆく。病気見舞に。ヒステリー的食慾不振なのだ。山科閑居というが山科は大してよいところでもなし。

十月十五日(木曜)晴

宇治にゆく。黄檗はやめ、電車のステーションからすぐ左へとってずっと興聖寺わきまで行った。が、春より冷え冷えとしすぎてよくなし。流れが此方側は速すぎもする。渡しで、一円ばかりさかのぼり(一円がところ、と爺云った)かえって彼方側につく。