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にっき
日記
宮本 百合子
11 一九二五年(大正十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,462 字 · 72 页
十月三十一日
少し足りないような書生、自分も座布団に坐り、手をもみ、口の端のこわれた、花柳病のありそうな男、然し、性質はよさそうで、故瀧田氏をしんからおしむらしく話した。つい先頃結婚して秋田に行った長女泣いて玄関から入らなかったと。又「先生は鯉がすきでねえ、鯉ばかり眺めて居ったが――鯉ばかりのこってしまってねえ」と。夜そんな話をして居るとフトY、東京毛織の塚口という男の死亡広告を見、深く動かされたらしかった。この男は、彼女との間にいきさつがあった人の由。死んでしまった。色即是空という感を私まで抱いた。彼のためにYの感じただろうすべての感情! 不思議という心持がする。
林町でモ服とかえた。かえり肴町マデスエ子と来、お下げどめを買ってやる。
〔欄外に〕
母上国府津。今夜父上と一緒に(父上九州より)かえる由。
十月三十一日(土曜)
林町の連中自動車で日光へゆく。
自動車が出来てから活動的になったこと! 元の母上に、きのう国府津からかえって、今日日光へゆくなど、考えられたろうか。いいあんばいだ。広く生活するのはよろしい。自分、何とフシギなものだろう。親たちと一緒に生活したり、友達と広くつき合ったりしたいといつもいつも思い乍ら、又いつもいつも他の事情のため、ヒカク的家にこもった生活をする。