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にっき

日記

宮本 百合子

11 一九二五年(大正十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,462 字 · 72 页

青空文庫

二月二十六日

五時すぎかえる。下に辻本という娘来て居、三津木貞子氏が暮に子息を失い、今老松館に止って居たので一昨日つれて来た由を話す。思いがけず。五時に来ると云うYがまだ見えず、妙に心配だ。何も無かったのだろうな。心配でたまらず。何故だろう。六時すぎて、Y疲れて来る。家は駄目な由。大家が借りて貰いたさによいような話をしたものと見える。やめ。やめて却って私としては安心なようだ。――明日さわがずにすむから。それについて、林町に電話をかけた。父上。私が今日林町に三十四十分頃しか居なかったと不人情と怒られた。「いそがしいので」「此方だっていそがしいですよ」と云われる。淋しい心持がした。四時前から五時迄居たのだ。

二月二十六日(木曜)曇 寒い。

朝起きて間もなく、近所に家があるときき、Y一人でゆく、駄目駄目然し盲学校の近所に一つ別なのがあると云うので二人で出る。あっちこっち歩いて居るうちに偶然大町桂月と埴原久和代氏の家を見た。二つとも実にひどい。感あり。細い、ひどくぬかる路を歩いて居て、Y下駄の緒を切る。彼女らしく一向グチを云わず。私、当分歩けるように結えて帰る。浮世絵を一寸見た後彼女かえる。