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にっき
日記
宮本 百合子
15 一九二九年(昭和四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 79,482 字 · 160 页
九日
五日、六日の夜二人で家までかえる途中、せんちなことを云うようになった。その圧力がかかって来てやり切れぬ。又金曜日はこっちも感染した。
芝居から出かけて、歩くうち、Taxi にのっかって来るうち、工合がかわって、降りてから二時間もぐずついてしまった。
嵐。嵐。
九日 土
晴れたよい天気だ。
この頃は大抵一日おきにはれたり曇ったりする。散歩。家。
Private suhren をよみ、いろいろ考える。
○自分が、頭がちに惚れたときはいい心持だな。あつくなって、後光がさして、賢くなって、ええ、一つ仕事してやれという気になる。
惚れられて感染したのはいい心持でない。こっちから後光がさし出さぬ。一種意気消沈してしまう。惚れる方がすきだな。惚れられるより惚れる方がすきだな。惚れられて、それに感染してしまったら、それを早く腹の中にしまうだけになることだ。
感情と官能との分裂があるからいけぬ。惚れられは。惚れたときこの分裂はない。よい心持だ。
十日 日
朝平さんのところへ出かけて行ったら、食事して居た。一寸家へやすみ、二人とも金なし故 St. Denis へは行かれぬ。