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にっき

日記

宮本 百合子

15 一九二九年(昭和四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 79,482 字 · 160 页

青空文庫

四月十七日

すれ違う人間きわめて尠く、その尠い人通りが尨大な建物の壁に沿うてこっちへやって来るその感じいやに迫った。

Y、こっち側いやに淋しいね、あっちへ下りちゃおう。

右側の住宅の並んだ歩道を歩いてかえった。一つは、左側、電車が疾走して来ては自分の通行しつつある方角とは逆の方へふっとんで行くのも淋しさの原因だ。

◎大きな建物の壁に沿うて歩いて居る。不図ここで追いつめられたら、もう塀にはりついて後に動こうにも動けぬ感じがいやに鮮かに心に来る。深夜自分の影が生命をもってその壁の上にあるのを感じ、それが血潮で描かれた感じにかわる。淋しい凄さ。午前0時の都会の巨大な建築のすき間。

○もう雪はすっかり消えてしまった。

◎午後七時でもトワイライトで、自分は窓から外を見ると、平静にして居られない。レーニングラードの白夜!

四月十七日(水)曇

Y、Passage に室がないので閉口して居る。一人先に出かけ、銀行、大使館、ВОКС

煙草(二十五本 8к)

エセントキ 2ビン(4к)

ソーセージ 百瓦 6к

リンゴ   キロ 五十哥

下着    二留

四月十八日

ひろ岡さんのところへ病気中の御礼にゆく。