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にっき

日記

宮本 百合子

15 一九二九年(昭和四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 79,482 字 · 160 页

青空文庫

そして、今も自分のところにあるセセッション風の緑色花壺をいくらか――二円前後で買った。

Y、七時から川谷さんのところで支那料理、自分はこの狭く雑然とし、驚くべく充実した室に居のこり。

Y、今日

――君がかえって来たら生活が死んでしまった、と云う。笑った。Y、私が病院に居ると、毎日来なければならないオブリゲーションがあっても自分の意志からだという感じで自由。この驚歎すべき壁と壁のすき間の雑居では、例えば一寸戸をあけたい、それにも bed と三寸しか間のない床には安楽椅子にかけた私の脚があるから

――立って

と云わなければならぬ。風向きのよいときは

フスタワイ、ラボーチイ!〔立て、労働者よ!〕

工合のわるいときは、

――立て!

だから何だか窮屈なのだ。だが、Y、この頃一人で暮したいらしい。自分日本へかえったら本当に別々に暮してもよいと思う。

自分も三ヵ月の病院暮しで独りで生活することをならった。これはいいことだ。二人で暮せないと暮せぬ、これは互に不自由だ。こんど独りで両方が暮したくなったとき、ケンカわかれというようなことになるおそれがある。間に一人ずつで暮すことよい。