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にっき

日記

宮本 百合子

04 一九一七年(大正六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,447 字 · 76 页

青空文庫

三月三日

三月四日

三月三日(土曜)

「オブローモフ」の上巻丈読み終る。英語ででもよんだらあれよりはよかろう。終りの方から起って来る彼の恋愛事件もいかにもオブローモフらしいところがある。確かに立派な作には違いないが、何といっても訳がわるいのが残念だ。長谷川先生に手紙でミスボイドのことわりを出して置いて貰う。

久米、芥川来訪。久米氏にはかなり久しぶりであったが、違って居る。どっちかと云えば少しみじめに変って居る。芥川と云う人は久米より頭のきくと云う風の人で、正直な純なところは少しすくない。岡信氏と佐藤功一氏の違いがあると云っていい位である。顔はかなりいい方だが、凄い。

七月に『中公』にのせられるかもしれない。飯坂の架空索道のことがすっかり構想が出来た。うれしい。

三月四日(日曜)

今、Mがかえる。到底私の辛さ悲しさを考えることは出来ないものだ。すべてが表面である。私は又新らしい失望を感じる。久しく会わずに居ると、記憶によみがえった愛情が、美くしくもえ出す、胸がふるえる。けれども、すべての日本人はあわい。自分の中に満ちて来る力を支え切れない。私はやっぱり私独りで行くべき道を行かなければならないものなのだ。