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にっき
日記
宮本 百合子
04 一九一七年(大正六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,447 字 · 76 页
三月十八日
三月二十一日
かじかんだ景物がフト東京を恋しく思い出させた。郡山はかなりあったかだ。十六日には雪が降ったのだそうだ。丁度俥にのった頃、どうしたのか、日光が雲に遮られて、極光のように幾条にも幾条にも分れて、御光のように光って居た。大変珍しい。凄い美くしさであった。
三月十八日(日曜)
思ったより幾層倍かあったかい。起きてから、道男と池の周囲を廻る。大変快い。地面のしめったのも池の大きくなったのも、皆心持がいい。
三月二十一日(水曜)
このごろは自分の心の中に、春の芽生みがしのび込んで居る。とりとめのないメランコリーが折々自分を占領して涙をこぼさせる。自分のこの大きな幸福にともなった大きな不幸。自分はすべての友達である。只友達で永久にすぎなければならない。自分の裡で火をもやして居るこの激しい情熱は、何かの対象が出来ると、すぐ色あせて失望し、うんざりして仕舞う。今より馬鹿で人を恋せた時代は幸福である。すべてを忘れ、すべてを――自我を全々没却して、恋せた時代は少くとも今より恍惚の時があった。けれども、今は、もっと深いうれしい恍惚が与えられる代り、もっと苦しまなければならない。