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にっき

日記

宮本 百合子

04 一九一七年(大正六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,447 字 · 76 页

青空文庫

三月二十八日

三月二十九日

部屋が離れてあると云うことや金のやすいところから丸正に来る。女中も至極単純だしするので快い。まだ新らしいので部屋もきれいである。久しぶりで透明な、煙のえむらない湯に入って生き返ったような心持になった。只、どてらが少しきたなかったのがいやだ。

三月二十八日(水曜)

夜がふけてから粉雪が降って居たけれども、今朝は天気がいい。目がひとりでにさめると、あったかい日差しが、しめた戸の節間からさして、庭でにわとりが鳴いて居る。宿屋と云う感じよりも家という心持が深い。何となくうれしかった。朝飯をたべてから、おいくのところへ行く。あい変らずいい人である。かえりにズーッと新十網橋の方から赤湯の方を廻って来る。少し材料が出来た。夜、善義が籔内と云う友達をつれて来る。小学教育のこと、宗教のことなどを話す。善人である。籔内と云う人はまだ二十だそうだ。善義よりはある意味に於て苦しんで来た人だ。籔内と云う自分の名字を話すとき、何とも云えず思い込んだような眼をして少し気味が悪かった。トルストイを中心とした話がはずんだ。

三月二十九日(木曜)

朝少し早く目をさました。十一時一寸すぎに善義が来てくれる。