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にっき

日記

宮本 百合子

04 一九一七年(大正六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,447 字 · 76 页

青空文庫

三月三十日

ズーッと白い泥を掘り出すところへ行って見る。あんまりすべてが粗野なので大変気味が悪いような心持がした。掘り出した泥を天日で乾かすために、笹の葉で屋根をかけた棚に蚕を置くまぶしのようなものに泥をならべて、幾段も幾段も置いてある。何だか生蕃の首棚のようで、非常に気味が悪かった。それから、天王寺の沼を廻って、一度宿へかえってお茶をのんでから、又愛宕山に行って索道を見て来る。なかなか眺望がいい。風が少し強いので落着かないようでもあるが、東京に居て軒下ばかり通って暮したものには非常に快い。少しばかり急に曲りくねった細道を歩くとき、Iがこわがって座ってしまったときには、可笑しい裏に非常にいやな心持が湧き出した。女性は弱いのが美しい原因ではない。

三月三十日(金曜)

きのうに倍した天気である。大変よくねて目をさますと、十時頃であった。風呂に入ったり食事をしたりした。Cranford を少しよむと善義が来る。館の山に行って見る。道は広いが、きのうの山よりは急で、少しぬかるので一寸した平地に出るまでには、息がきれて苦しかった。この山は日本海と太平洋と殆ど中央にあるのだそうで、この周囲の盆地が一目に見える。