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にっき
日記
宮本 百合子
04 一九一七年(大正六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,447 字 · 76 页
四月二日
ああ云うものには夜が必ず背景となって居なければならないように思われる。男も女も「何もこんなことをして居たかあないんだが、仕様がないやね」と云った調子に思える。午後岡村のおじいさんのところへ行って、すっかり陰気な心持になってしまった。あの四十位の妾の居ることは、彼に不幸をもたらそうとも、小指ほどの幸福の原因にもならない。
四月二日(月曜)
午後から愛宕山のはずれの方からグルッと一廻り歩いて来る。六時すぎにお父様がおつき、夕方のうす暗い中を、黒い外套の衿をたてていらっしゃったときには、お父様と思えなかったほど若く美くしく見えた。それ丈、都会の風俗が珍しくなって居るのだとも思う。おかあさまが話相手がなくて困っていらっしゃるそうだ。『新日本』と、『トルストイ研究』と桃山を沢山よこして下さる。『新日本』の文芸欄は女流ばかり集めたのだけれども、どれもどれもだ。まして俊子氏の「チューリップ物語」には少し意外な感さえある。どうかああ云う風な発表はしたくないものだ。久米氏の「エロスの戯れ」(文世)は、いかにもあの人の作である。私には出来ない。あの人の長所と欠点が充分出て居る。