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にっき

日記

宮本 百合子

04 一九一七年(大正六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,447 字 · 76 页

青空文庫

六月十七日

のことを申上げる。あれと「牧の方」、義時の死ぬときと、三部作になるのだそうだ。今年は出来ないかもしれない、なにそんなにせかずといいと云って被居っしゃるのを見ると、私共の持って居ない安心、落着きを持って被居っしゃる。フト、私はまだ何でもない事を何でもなく出来ない年だと思った。

六月十七日(日曜)

雨が降って居る。けれども、千葉先生のところへあがる。丁度御出かけのときだったが一時間ほど御家で御話をして、かえりには家の前まで御一緒に来る。心理学の月謝のことと、公開講義のこと、芳崖翁の遺作のことについて御話をして来る。「先覚者」のことと、「罪と罰」の比較をする。レオナルド・ダブィンチをああ云う風に描いたのは、矢張り著者がメレジェコフスキーだからだろうと云うようなことをおっしゃる。帰ってから「戦争と平和」をよむ。先によんだときより、ズーッと興味もまし、利益も得る。一つある本を読んでも、その時代が違うと、まるで受入れかたが違う、だから、あれはもう一度よんだからいいと云う本は、少くとも、それが僅かでも立派なところを持って居るならば、一年ごとによみなおさなければ、真個ではないらしい。