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にっき

日記

宮本 百合子

04 一九一七年(大正六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,447 字 · 76 页

青空文庫

六月二十九日

どこにでも可哀そうな心が苦がって居て、どこかに生れつきの人好さがほの見えて居る自分がいとしかった。

誠之の藤棚のわきの円木に腰をかけて陰気に考えこんで居た、大人とも子供ともつかない自分の様子などを思い出すと、子供に対して大人の持って居る理解が不忠実な、自己撞着なものであったことを思う。あの自分、まだ十一、二でも、青年期の者が持つような心の状態にあった自分は、その期にあるものとしてあつかわれなかったために、どの位苦痛を感じて居たか分らないのだったなどとも思う。フト、来年は生れてから二十年たったと云う大きい区切りめの時だとしみじみ感じた。今年と来年は自分にとって一番記憶すべき感情を持つだろう。一生に十九、二十のときは再び返っては来ないから。こんな心持は男性にでもあるだろう。

六月二十九日(金曜)

今日自分はどうかして間違って、一日先の方へ書いてしまった。(昨日かかなかったと思ったので。)

すっかり天気が晴れ上って、土用中のような暑さが、たまらない圧迫を加える。朝かなり早く起きたのだけれど、何しろ余り暑くて、ろくにものもよめず、書けもしない。「受難者」を読み返して見た。