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にっき

日記

宮本 百合子

04 一九一七年(大正六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,447 字 · 76 页

青空文庫

七月二日

芝草の色、岩波、赤銅色の漁師の肌、それ等が皆一まとまりになって、おだやかな何とも云えない色を出した。

七時頃燈台に灯が入る。月が大きくなるにつれて、海の水かさはますし、潮の色も複雑になって来る。牛や山羊を半放牧にしてあるのが非常に異郷的に感じられた。

七月二日(月曜)

昨夜は、ろくに眠られなかった。蚊は沢山居るし、暑いし、枕は思うようにならないし、ほんとうにいやであった。朝まだ早いうちに雨戸をガラガラあけて仕舞うので、もう少し寝たいと思っても、それさえ出来ない。いやな心持になって仕舞う。海も単調だし、海女もいい人は居ず、帰りたくなって仕舞った。「すわ」か先に小此木先生のいらっしゃったところへでも行って見ようかなどとも思う。午後いよいよなぎになって、とうてい外洋の濤は高しどころの様子ではない。ほんとうに失望してしまった。もう少しいいところだと思って居たのに。

隣室には、『日日』の記者か何か居る。誠之でよく見た赤っ面の絵かきが此処に来て居ようとは思わなかった。夜東京から葉書が来る。赤ちゃんが口中発疹ではさぞ困って居るだろう。或る考えが浮ぶ。

七月三日(火曜)