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にっき

日記

宮本 百合子

04 一九一七年(大正六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,447 字 · 76 页

青空文庫

七月三日

七月四日

昨夜からの雨で、風が出たので、波は少しあらい。けれども、まだ想像以下である。海士についても、そんなに面白いこともなさそうだし……。あさって頃は帰ろう。いやいやながら、午後近くなってから野島の方へ行って見る。まるで思ったのとは違う。大変に立派で綺麗である。いかにも日本のはて、おとなりはアメリカだと云う心持を起させる。かなり平らなところで、三人の子供が一まとまりになって、虱を何だか小猿のようで、何とも云われない野生な美があるし愛嬌もある。どこへ行っても、子供よりも、大人の方が悪く見える。トルストイの「人生論」を一寸よむが、なかなかうなずかせる。夜となりの部屋へ六尺ゆたかな大男が来て、ため息をつくような、――うなるような謡曲をする。たまらない。とうとう浪花節へすべり込みかける。

七月四日(水曜)

ト翁の「人生論」をよむ。種々な疑問や考えが浮ぶ。

自己を他人のために尽すこと。人のために命をすてること。人生は善、幸福へ向っての努力であり、その努力をすべきために与えられたものである。

それ等は皆正しい。我々は結局は、生は死ならず、善は悪ならずと云う確固たる信念を持ち得るまでに行かなければならないのはたしかであり、又そうなるのは立派である。