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にっき
日記
宮本 百合子
04 一九一七年(大正六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,447 字 · 76 页
七月五日
七月六日
決して個人的生活の満足が或人を人間らしくしないことは知って居る。他のためにつくせ、彼はその一言を口に出すまでに、どの位の苦しみを経て来たかと云うことを我々は考えなければならない。今日、日本の文明――海外から来た思想は殆ど完成されたものを与えられて居る。こなされた滋養の精である。それ丈養いにはなる筈である。けれども汝の胃腸の薄弱になることを恐れよ。
七月五日(木曜)
人のためにつくす。そこに種々な解釈は下されることと思う。先に千葉先生がおっしゃったこと――カーネギーがト翁に金の処置を相談したところが、総てを貧しきものの群に分け与えよと云ったことは、自分はもっとこの先の時代のためにつくすことを望むとおっしゃった通り――自分は人のためにつくすために我らをよく生かし、勉強させ或時に於て他人の時間を費させるかもしれない。けれどもすべては次の時代のためである。次の時代の者達の幸福のために、現在の私は現在の個人的の努力に過して居ることを恥かしいとは思わぬ。
七月六日(金曜)
今朝はゆっくりよく眠る。午後になってから主人が燈台に案内してくれる。自分の息子が、古参兵にいじめられて口惜しまぎれに、鉄道で死んでしまったこと、会津の兵がにげて来て、あとから官軍が追って来たなどと云うことを話してきかせる。