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にっき
日記
宮本 百合子
04 一九一七年(大正六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,447 字 · 76 页
七月十二日
七月十二日(木曜)
種々な哲学を読んで見ると、我々の智識がどれ位あやふやであるかと云うことをしみじみと感じる。頭が、どこまでも考えることをしないように癖のついて居ることを感じる。何も彼にもがいいかげんのところまで行けば――此の上自分の突込むことはすべての点に於いて利益でないというところまで行くとスーッと手ぎわよく後へ引いてしまう。じきあやまる。じき言葉をにごしてしまう。そしてそれが普通になって居る位、総て現代の平凡者の頭は、どうでもよくなって居るのは確かである。何人にとっても利害関係と云うものは――損になることと得になることとはそんなに違うものではない――から皆が自分にまあいいところまで行ってはやめるから何に於ても突込んだところがない。それが歯がゆい。この間、坂本氏のところへあんなに興奮して送った手紙に対しても、何の反響のないことを見ると――勿論主観的であったのにはちがいないけれども――私の今心に満ち満ちて居ることは、彼女にはさほどの苦痛にもなって居ないことと見える。臆病な妥協、卑劣な機嫌とりに私は一寸でも迷わされてはいけない。
七月十三日(金曜)