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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
09 一九四二年(昭和十七年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,952 字 · 130 页
十日付のお葉書を十二日朝丁度夜具を届けようとしていた時に頂いて、とうとう催促されてしまったと悲しくなりました。出掛ける前にお葉書をみたからシャツとズボン下は届けられましたが、どてらが遅れて本当に御免なさい。縫っている人が町会で遺族案内を割合てられ、十九日まで仕事を出来ないことになったので、益※(二の字点、1-2-22)遅れて二十日過ぎにやっとお届け出来るでしょう。
十七日の為にどてらがなくて詩があるなどというのは私の好みと全く反対で気まりの悪い程のものですが、どうぞ今年はそういう頓ちんかんを御辛棒下さい。何しろあんな大きいボタモチのような字は自分ですかしすかし書けるけれど、縫物の方はそれも出来ず人頼みの哀れさです。その上今年は秋になって私が起き出してから冬物を手入れしはじめるさわぎでしたから。
国府津行きのことは、私に関する色々の事情を考慮して行かないことに大体決めました。田舎は案外にきゅうくつな時代になっていますし。あちらはずっと管制の状態です。反ってここでなんとか家のゴタゴタを受け流して、二階で日なたぼっこでもしていた方が、万事につけて安静の治療が続けられそうだということがわかりました。