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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
なおも、巌流島の不思議な女たちについて、ひそひそと、語りあった。
詰所の中から、山下組の助役が出て来た。
「玉井は居らんか」
「居りません」
と、新之助が答えた。
「どこに行った?」
「さあ、飯食うて、どこかに出かけよりましたが、……また、飯代部屋で、将棋さしとるのとちがいますか」
「将棋の好きな奴じゃなあ。急用があったんじゃが、……」そういって、当惑したように、長い顎をつまんだが、マンに気づくと、「おマンさん、あんた、玉井と夫婦になるそうじゃね。玉井が、話しとったが……」
「嘘ですよ。誰が、あんな……」
「そうかね? ……嘘かね?」
新之助は、策略的な顔になって、助役の袖を引いた。
「ボーシン、あのハイカラ女ども、どこの者ですか?」
「そんな口きくと、碌なこたないぞ。今売り出しの、若松の吉田磯吉さんが、客人といっしょにつれておいでになったんじゃ」
新之助は青くなった。
「そういえば」と、助役は、ふと気づいた顔で、「森、お前にも用があったんじゃ」
「なんごとです?」
「昨夜から、うちの親方のところに、若松の吉田親分をはじめ、下関、小倉、博多、別府などの顔役方がお見えになって、泊りがけで遊んでいなさるんじゃ。