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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

玉井、すぐに、永田の若い衆全部を引きつれて、この場から退散せえ。このパナマ丸の荷役は、ちゃあんと、こっちでやる約束が出来ちょる。それを分取りしようなんて、横着にも程がある。さっさと、引っこめ」

「約束?……誰と?……」

「お前の親方の、永田杢次とよ」

金五郎は、せせら笑って、

「奇妙なことを聞くもんですなあ。他人が出鱈目の約束するなら、そんなこともあろうかと思うが、自分の大切な仕事を、本人の永田親方が、なんで、他人に譲ったりなんかしますか? 気でも違わんかぎり……」

「ワッハッハッハッ、永田が狂人ちゅうこと、子分の癖に、気がつかんとか。玉井、お前を贔屓にしとる永田が、お前たちを売っとるんじゃよ」

「そんな途轍もない因縁をつけても、誰も、ほんとうに、する者はない。正当な仕事の邪魔をしたりせんで、ともかく、引き取って下さい」

「ワッハッハッハッ」

と、角助は、また、哄笑した。いかにも、会心そうである。

敵味方の視線が、鋭く、二人に、集中している。

「玉井、引き取らにゃならんのは、そっちじゃぞ。いくらいうても、おれを信用すまいから、証拠を見せてやる」

角助は、腹掛けの丼を探って、一枚の紙片を取りだした。