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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

「大親方、なにをなさいます?」

「玉井、わしは、前々から、お前を、永田組ではのうて、聯合組の大黒柱になって貰いたいと考えとった。それで、すこし、出過ぎたかも知れんが、永田組の札のあとに、玉井組の札を掛けることも、もう、すっかり、段取りしてしもうた。それから、本腰を入れて、仕事を切り盛りして欲しいと思うて、お前のために、家も一軒、借りてある。若い衆を十人くらいは置けるくらいの、ちょっとした二階家じゃ。そこへ、移って貰いたいと思うとる」

「その家というのは、どこですの?」

と、夫人が、訊ねた。

「若松の新仲町じゃ。どうで、洞海湾の石炭荷役は、若松港が主じゃけ、仕事師は、若松に住んどらんと、本式にならん。この戸畑はなにかと不便じゃ。聯合組の事務所も、若松側にあるし、……な、玉井、そうしてくれ」

「困りました」

「若松は、うるさい奴が、いっぱい居るけ、怖いか?」

「怖いことなんか、ないですけど……」

「そんなら、行ってくれ。若松で、玉井組の看板を掛けて、立派な男になってくれ」

「金さん、あたしからも頼みますよ」

「帰って、家内と相談してから、御返事します」

金五郎は、牡丹雪を被りながら、重い足どりで、帰宅した。