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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
列席者の紹介と、仲直りの式とは、すでにすんでいたので、後は無礼講である。盃が、飛ぶように、廻る。
「これから、一芸廻しにしよう。……玉井君、なんか、やりたまえ。わしが所望じゃ」
友田喜造が、そういった。
「やります」
金五郎は気軽に立ちあがると、
「ちょっと支度を」といって、部屋を出た。
五六分ほどの後、拍子木の音とともに、舞台の幕が開いた。中央に、二人の男女、向かって左に、肩衣をつけ、見台に両手をついて、頭を下げているのは金五郎、右に太枠の三味線を前に置き、これもお辞儀をしている、銀杏返しの女はお京。
拍子木を打っているのは、幇間の胡蝶屋豆八、頓狂な黄色い声で、口上を述べる。
「東西、東西、このところお聞きに達しまする浄瑠璃芸題、「艶姿女舞衣」、語りまする太夫、玉井春昇、三味線お京、いよいよ、三勝半七酒屋の段、そのため口上、東西東西」
拍手。
金五郎は顔をあげ、お京は三味線を取りあげる。
一座の視線も、好奇のいろで、二人に集中しているが、その中で、友田喜造、染奴、大庭春吉、三人の眸には、それぞれに違った複雑なものがみなぎっていた。
金五郎は、四国時代から、浄瑠璃が好きで、祭礼などで行われる素人大会には、幾度も出たことがある。