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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

「そしたら、われわれの恩人の、その得意さんを、大切にせんならんことも、当りまえじゃないか。違うか?」

「違いません」

「そうすると、玉井君、君の組合を作る運動ちゅうのは、お得意さんに、弓を引くことになりゃせんか?」

「いいえ、弓を引くというわけでは、けっしてありません。それは、荷主さんあっての私たちということは、充分、承知して居ります。けれども、現場で、下働きをしている仲仕たちの生活が、あんまりみじめで、こんなに貧乏なのは、やっぱり、どこかに、無理がある、それは……」

「どこに、無理がある?」

「一口に、思うようにいえませんけど、結局、賃銀が安すぎると思いますのです。荷主さんと、働く者とは、持ちつ持たれつ、なるほど、荷主さんあってはじめての私たちですけれど、これを逆に申しましたら、やっぱり、私たち働く者あっての荷主さんでありますし、荷主さんだけが肥え太って、働く者が、いつも、ぴいぴいで痩せとるというのは、正しいこととは思われません。それで、組合を作って……」

「荷主さんへ、喧嘩をふっかけるというのか?」

「そんな風に、いわれますと、困りますのですが……」

「どんな風にいうたって、同じじゃないか。